新たに飲食店の店長や料理長になった際、売上をもう少し上げたいが何かできることはないかなと以下のような疑問・悩みを持ったことはないでしょうか。
- オペレーションをもう少し改善すれば客数をこなせそうだがみんないっぱいいっぱいだしな、、
- 賄いに使うとはいえ、仕入れた食材をはけさせることが最近できていないな
- 客単価を上げるために品数を増やしたいと思っているけど、どの程度どんな内容で増やしたらいいかわからない
こういった疑問を持ったまま、ただ闇雲にメニューを増やしていては客単価が上がるどころか、廃棄が増え、オペレーションが悪化し、売上や利益が落ち込みます。
そこで本記事では、メニュー数が与える影響の範囲や適切なメニュー数の設定方法をメニューの「数」にフォーカスを当てて徹底的に解説していきます。
この記事は服部調理学校を経て、個人経営の飲食店4年、大手飲食で3年修行を積み、現在は計200店舗ほどの集客支援をしている飲食HOW-TO編集部が執筆しています。
メニュー数についての理解を深め、さらなる売上UPを目指すあなたには是非最後までご覧いただきたいと思います。
そもそも飲食店に理想のメニュー数はある?
結論、ありません。
以下3点の要因のバランスをとり、その店舗にあったメニュー数を探し続ける必要があります。
- 店舗のブランドイメージで決まる
- キッチンスタッフ数で決まる
- 使用食材で決まる
それぞれを詳細に解説していきますが、大事なのは全てのバランスをとることです。
メニュー数についてのメリットデメリット等解説したのち、後述「お店にあったメニュー数・構成を決める方法」にてバランスの取り方含め説明するので、お時間がない方は読み飛ばしてください。
店舗のブランドイメージで決まる
店舗のブランドイメージで決まるとはどういうことかというと、要するに店舗が目指しているゴールイメージやご来店いただくお客様の趣向によって決まるということです。
例えとして、以下4つのジャンルを切り口に考えてみますが、あなたのお店にも照らし合わせてみてください。
- ラーメン屋
- 町場個人経営の居酒屋
- チェーンのファミリーレストラン
- 個人経営高級イタリアン
休日に食べ歩きなどをすると色々なことに気づくかと思います。
上記の4つのジャンルで詳細の解説をしていきます。
ジャンル | ゴールイメージ | 客層 | メニュー数 |
---|---|---|---|
ラーメン屋 | たくさんの客数を安定して獲得したい | ラーメンを食べにきている | 比較的少ない |
町場 居酒屋 | 常連客をたくさんつけたい | アットホームな感じで、リラックスし、長時間滞在する | 多い |
ファミレス | 稼働率・注文品数を増やし売上を上げたい | 安価にお腹を満たしたい。勉強やおしゃべりなどをしたい | 多い |
レストラン | 客単価をあげ、店舗のブランドを強化したい | 食事を楽しみにきていて、お金を持っている | 中程度 |
ラーメン屋
ラーメン屋は食券で限られたメニュー数を提供することが多いです。
なぜならラーメン屋に来るお客様の大抵はそこでゆっくり飲み食いする訳ではなく、「ラーメンを食べにくる」という目的で来店するからといった理由になります。
「メニュー数」というより、ニーズにあったメニューを提供し、味はもちろんオペレーションや接客を向上させることでファンがつきやすい業態です。
町場個人経営の居酒屋
ここでは客数20席ほどでキッチン1人、ホール1人を想定してお話を進めますが、町場の個人経営の居酒屋は、メニュー数が多くなる傾向にあります。
なぜなら、キッチンの力量で色々なメニューを制作ができるからです。
個人経営の居酒屋ではお客様に喜んでもらおうと、メニュー数を増やし間口を広げるケースが多いです。
その結果、季節によって仕入れ食材が代わりメニューも変更したりなど、コアな常連客でも飽きないような内容になっています。
また、個人経営なので例え食材が余っても、賄いやご飯に自由に活用できるそんな理由もあります。
チェーンのファミリーレストラン
チェーンのファミリーレストランは本部でメニュー数や単価などが統制されています。
また、安価な価格帯で料理提供がされるため、一般的には色々頼んでもらい注文品数を増やすことが単価を上げる施策になります。
そのため、デザートやおつまみなど細かなメニューの数も多くなっています。
個人経営高級レストラン
個人経営のレストランは料理・サービスの質を上げ、ブランド強化し客単価を上げることをゴールと掲げている店舗が多いです。
旬やこだわりなどがあり食べてもらいたい料理を全面に訴求するため、メニュー数を必要最小限にし、一品一品集中して提供することが求められます。
キッチンスタッフ数で決まる
次にメニュー数を決める上で考えなくてはならないものはキッチンのスタッフ数です。
複雑なオーダーは仕組み・人数・それぞれの能力で決まりますが、その中心となる基準がスタッフの人数です。
スタッフ数を考える上でまず自分のお店が客数に対して多いのか少ないのかの目安を算出しましょう。
目安として以下計算式で参考人数が算出できます。
ホール人数目安=「座席数」÷4÷4 ホール人数:キッチン人数=1:1 キッチン人数目安=「座席数」÷4÷4
キッチンスタッフが多い場合
人数目安よりもキッチンスタッフの人数が多い場合、各キッチンで役割分担ができるため、メニュー数は比較的多めでも問題ないでしょう。
キッチンスタッフが少ない場合
人数目安よりもキッチンスタッフの人数が少ない場合はメニュー数も絞った方が良いです。
注意点
キッチンスタッフ数で決まると記述しましたが、あくまで数字的な概算だということを注意する必要があります。
お店のブランドイメージ・コンセプトやキッチンスタッフの熟練度によって大きくその幅は考慮した方が良いでしょう。
高級レストランについては、席数が少なくても料理にかける手間が多いため、メニュー数は少なくなります。
また、熟練したシェフと調理学校新卒の子では同じ時間でできる仕事量には差が歴然で、同じ1人分として換算することは適切ではないです。
使用食材で決まる
- 鮮度重視食材:メニュー数少
- 長期保存食材:メニュー数多
メニュー数は使用する食材によって決まることもあります。
現在は保存技術が発展しているため2、3日でダメになる食材はそこまでありませんが、そういった食材を多く使用するレストランはメニュー数を絞ることが多いです。
具体的な対策としてはアラカルトを制限し(もしくはなくし)、コースを中心とするなど、食材が捌けるような工夫をすることが求められます。
また逆にチーズや乾き物など、長期保存が可能な食材が多い場合、保存場所の容量にもよりますが、幅広いメニューを展開するのが一般的です。
長期保存が可能な食材は塩辛く、おつまみが多いので、お酒をメインに出しているワインバーやバルなどはお客様にも喜ばれるのでメニュー数多めが好ましいです。
メニュー数が多いメリット
メニュー数が多いメリットとして挙げられるのは以下3点になります。
- お客様が飽きない
- ホールで提案がしやすい
- ニッチなニーズに応えられる
詳細は次章以降で解説していきます。
メニュー数が少ないメリット
メニュー数が少ないメリットとして挙げられるのは以下3点になります。
- キッチンが一品一品に集中できる
- オペレーションが容易
- 鮮度の良い食材・高級食材を扱える
こちらも詳細は次章以降で解説します。
メニュー数がお客様の購買意欲・心理に影響する!?
メニュー数は多ければ多いほどいいということは断じてありません。
アメリカの心理学者であるバリー・シュワルツは「選択のパラドックス」を提唱しております。
これは人が何かを選ぶ時に選択肢が多すぎると、どれを選んでいいか逆に不安になるというものだ。
例えば、ぎっしりと辞書のように書かれているメニューから選ぶのと、10個程度からおすすめが3つ紹介されているメニューとでは、お客様の選ぶ心理的な労力・情報収集の手間が違います。
あなたならどちらの方が、気持ちがいいでしょうか。
注文数を増やしたいから、メニュー数を増やそうと考えている人は、一歩踏みとどまり戦略を考えてからにしましょう。
お店にあったメニュー数・構成を決める方法
ここでは前章で解説したメニュー数に関するトピックと踏襲し、自分のお店にあうメニュー数の目安を算出します。
ただ、あくまでこれは目安なので、お客様からの声や現場の意見を参考に、調整を進めることが求められます。
現状把握をする
以下5つの項目を、改めて整理してみましょう。
それぞれを整理したのち、前章の解説に当て込んで考え直して見ることがヒントに繋がります。
- ブランドイメージ:普段使い or カジュアル or 記念日(高級路線)
- 客層:性別・年齢層・単価・エリア
- スタッフ数:何名いるか
- 席数・稼働率:席数は? また通常の稼働率は?
- オペレーション(新人・ベテラン):新人・ベテランの割合は?
情報を整理し、方針を決める
一般的に推奨されているのは各カテゴリー毎に7品程度というメニュー数になります。
上記の現状把握により、自店の強みや特徴を踏まえメニュー数を設定しましょう。
- 前菜:12品
- パスタ・リゾット・ピッツァ:5品
- メイン:3品
- デザート:10品
計30品
- 前菜・つまみ:20品
- ご飯もの:3品
- メイン:2品
- デザート:2品
- 〆の麺類:3品
計30品
同じ30品でも内容が違うことがよくわかります。
自店にあったメニュー数・メニュー内容にしましょう。
【おまけ】ワンオペ回せるメニュー数はどれくらい?
客数10席程度で、一人で開業した居酒屋・レストランにて、ワンオペで回せるメニュー数はどれくらいなのでしょうか。
ここではおまけとして考察を進めていきます。
こちらも基本的にはお店のコンセプトやマスターの熟練度によるので、正解はありません。
ただ注意しなくてはならないのは、食材の活用度(新鮮度)とオペレーション。
メニュー数が多いことを自慢とせず、「メニューにはない料理も作れますよ」と、営業に余裕のある際にお客様とコミュニケーションを取ることで、特別感を演出しコアなファンを増やしましょう。
また、ワンオペでやることで、全ての食材・ドリンクを把握できているため、黒板など活用し、その時々でおすすめを変更することも有効的でしょう。
まとめ
- 適切なメニュー数の正解はない
- コンセプトや客数、スタッフ数によって調整し続けることが必要
本記事では飲食店でのメニューの数について、深く考察を進めていきました。
しかし最も大切なのは、常にメニュー数やメニューの内容、見せ方について、考え続けることです。
お客様のニーズを拾えるような素敵なお店を目指して、向上していきましょう!
コアなファンを増やす、さまざまな方法やヒントについて、他の記事でも紹介しているので、是非飲食HOW-TOをご活用ください。
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